ご挨拶

突破力ある研究をもたらす研究支援スタッフ

 分析計測・極低温部門は、機器の共同利用と保守管理とともに、研究支援員による解析を学内、学外から受け付けています。本稿では研究支援員の重要性について紹介してみたいと思います。
自然哲学が宗教的世界観から決別して、実験に基づく客観的かつ実証的な科学に変遷する過程で、研究者と職能技術者との分業が確立されてきました。ワットが発明したとされる蒸気機関は、パパン(仏 1647-1712)による圧力釜、ニューコメン(英 1664-1729)によるシリンダーピストンという技術者の知の継承から派生したものです。パパンは、気体の状態方程式で有名なボイルや力学の開祖フックに助手として仕えた技能者でした。今日の世界人口を支える窒素固定化技術は、ハーバーによる化学平衡研究を技術者ボッシュが鉄触媒と耐圧合金の発明で具現化したものです。欧米の大学・研究所では、今日でもテクニカルな専門技能者が居て、機器の維持管理や院生への実験指導まで幅広く研究の現場を支えています。
 日本では、デフレ社会を克服する上でイノベーションが重要であるとして、若手に大きな研究費を付与する科学政策が取られています。それを獲得するために、若手が研究の主導権を握れる大講座制を積極的に取り入れた部局改組も進められてきました。若い感性を持つ研究者がシニア研究者の発想や着想に縛られているよりも生産性が上がることが期待されていますが、若手研究者は経験に基づく実験スキルがないという弱点もあり、取ったグラントに見合うだけの研究成果がすぐには得られずに、とても苦しむという現実もそこに発生します。
 年代に拘わらず外部資金の調達にはインパクトジャーナルに投稿論文がアクセプトされることが重要です。そのためにも突破力のある高品質なデータを、よく整備された機器と、蓄積したスキルで支援する研究支援体制が必要です。岡山大学の研究支援基盤を支える技能集団の待遇やキャリアパス整備も大学として取り組むべき大きな課題として残されています。本学の研究支援員が果たす役割と意議について学内関係者諸兄から変わらぬ支援とご理解をよろしくお願い致します。

岡山大学自然生命科学研究支援センター
分析計測・極低温部門長
田 村  隆