ご挨拶

 分析計測分野は、学内の重要な分析装置を学内外の研究者が共同で容易に利用できることを目的に、26年ほど前に編成された組織です。 現在、直接管理する機器が50台ほどあり、さらに学内の各研究者が保有する機器も、設置はそのままで当分野が管理・運用をする,という機器も増えています。 分析装置を複数の研究者が利用することは、より多くの成果創出に繋がりますし、また装置の健全性も保たれます。 さらに大学の装置であることから、学生の分析技術習得も行われ、いずれ彼らの活躍する社会,会社や研究機関においてもその有用性が伝わることから、社会全体に高度分析技術が浸透するための役割も担っているわけです。
 このように分析装置の共同利用は多くの重要な副炊効果があり、多くの先生方の協力でここまで進んで来ました。 一方大学を取り巻く環境は、非常に遠い速度で変化していることは皆さまも同様にお感じかと思います。
 現在分析計測分野が直面している事柄では、電気代高騰にともなう装置利用料金の値上げ、各種装置の老化対応が深刻な課題です。 中・大規模の装置故障が起こるたびに、分野のスタッフたちは、研究協力課、理事、学長をも巻き込んだ議論をします。 装置故障は宿命ですから、なんといってもこれに対応する制度が必要なのですが、今のところ国立大学は装置故障や更新に備えた資金の年度を超えた積立が出来ません。 学長もその対応が絶対重要だと認識しており、本年はこの問題に全学的な対策を見出すことが課題となっています。
 一方、分析装置の共同利用の有用性は、多くの皆さんに評価されていることもあり、取り組みを岡山大学全体に広げる作業が始められています。 本年は岡山大学の研究推進本部に、機器共用推進本部が設置され、学内にある部局を跨いだすべての分析装置を統一されたインターフエースで共用化し、学内外の研究者が効率的に高度な科学分析を実行できるように準備をしています。 これは文部科学省の「研究設備・機器の共用促進に向けたガイドライン」に基づいて設計されます。 そこでは広範な分野に重要な機器は、大学の中核的な機能と定義され、コアフアシリティという名称で呼ばれます。 この「コアファシリティ化とその運用拡張」は日々進捗しています。このため先生方の利用される装置も、ある時期から予約、報告,会計などがこのシステムに移行してまいります。 運用システムの変更は適宜関連する研究者やユーザーグループに連絡していく予定です。
 この装置運用システムの拡充に前後して、分析計測分野では、あらたにサイテック・コーデイネーターというポジションの先生方が、3名着任しています。 この皆さんは、分析装置利用に関する相談,依頼分析実施、あるいはコアファシリティ事業にも携わりながら、ご自身の研究も遂行される研究者です。 皆さん専門分野を持つことから、データ解析などにおいても、深い洞察を得られることが期待できます。 先生方や学生さんも、ぜひこの皆さんとのコラボレーションを楽しんでいただければと思います。
 またこのような専門員の配置という視点では、本年より技術系職員の皆さんが、総合技術部という部署所属に集約されました。 これは多くの先生方はご存知かもしれません。 分析計測分野においても技能の高い職員の方が多くいらっしゃいますが、皆さん総合技術部の所属となっています。 これにより今後は、他部局の技術職員のなかから、分析装置利用に意欲のある新しい職員の方がいらっしゃるかもしれません。
 このように分析計測分野の役割や人員配置は、このところ目覚ましく変化した(している)のですが、これに同期するように、岡山大学と SPring-8(高輝度光科学研究センター、JASRI)との包括連携協定が本年発足しています。 この契約により今後は、SPring-8の利用において、放射光実験前に追加的に必要な分析がある場合,それを本学で実施することが容易になりました。 また本学での解析の中からも、放射光利用により明快・重要な成果が期待されるテーマについては、できるだけ連続的に放射光利用が図られるようになります。このためのJASRI-岡大の情報共有体制が整備されました。 今後は本学の共用機器ユーザーに、世界最大の放射光施設である SPring-8が学内分析装置に連続して見えるようになれば理想だと思います。
 そして最後に、分析計測分野は、国立研究開発法人物質・材料研究機構の材料データプラットフォーム DICE に参加登録したことも報告しておきます。 物質究に役立つ各種データへのアクセスが容易になっていますので、興味のあるかたは当分野までご連絡ください。

岡山大学自然生命科学研究支援センター
分析計測・極低温部門長
池 田  直